なかのかつきの紹介
グラナダhistory
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*「朝日新聞」'02 3月24日 朝刊*
変わらぬ旋律 30周年 ギター生演奏の店「グラナダ」 大阪・キタ
深夜まで若者でにぎわうアーケードを抜け、雑居ビルの4階へ。プロやアマのギタリストがラテンやクラシック音楽をつまびく大阪・キタの居酒屋「グラナダ」は開店30周年を迎えた。カラオケの流行などで客足の遠のいた店に最近、少し変化が見られる。変わらぬ空間を懐かしんで中年客が戻り、若者が「本物」を求めてやってくる。
波打った白壁にスペインの民芸品が掛かる。カウンターとテーブルで20席。
店主の中野勝城さん(59)は24歳から5年間、広告代理店に勤めながら、夜は職場の同僚と、ラテン音楽を演奏して店を渡り歩いた。「ベサメムーチョ」や「キサス・キサス・キサス」のヒットもあり、本業の給料の3倍を稼ぎだした。
71年に退職してプロになり、翌年「グラナダ」を開店。ボトルキープの期限が切れたウイスキーを学生に半額で提供するなど、若者が入りやすい店を目指した。
生演奏の店が珍しかったこともあり、全国から演奏家や客が集まった。狭い店内で見知らぬ男女がひざをつき合わせて語り合い、音楽を聴く。舞台に立った演奏家は約500人。プロになった人も少なくない。
木造の平屋や2階建てが目立った近所の商店街は、次第にゲームセンターやコンビニ、風俗店に変わっていく。音楽の流行も移ろいラテンを聴く人も少なくなる。とりわけカラオケボックスが普及してからは若い客が減り、相席も敬遠されるようになった。
しかし最近、中野さんは復活の手ごたえを感じるという。村治佳織や木村大のクラシックギターが人気を博し、ボサノバを聴きたいという問い合わせが舞い込む。耳の肥えた客とレベルの高い演奏との緊張感に魅せられる若い客もいる。
一方で、学生時代に通って以来という中年客も増えた。ジプシーの洞穴の家を模して作った店に足を踏み入れ、「変わったのはマスターの顔と頭だけだ」と懐かしさに浸る。
「30年変わらない空間が青春をよみがえらせるんですね。長くやってきてよかったと思う瞬間です。あとは若い人が増えて、昔からの音楽を生で味わって欲しい」と話している。

*グラナダhistory*
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